星天qlayとは

2024.02.19

人を知り、つなげることで、地域にイノベーションをもたらす作戦会議室/横浜国立大学 総合学術高等研究院 共創革新ダイナミクス研究ユニット オフィス

「変化を楽しむ人が新しい生きかたを実践する」というコンセプトを持つ星天qlayのDゾーン(天王町駅西側エリア)。”生きかたを、遊ぶ”住まい「YADORESI」、クリエイター向け協働制作スタジオ「PILE」など、新しい生きかたを実践するためのお店や施設が軒を連ねています。そんなYADORESIとPILEの間にあるのが、横浜国立大学総合学術高等研究院共創革新ダイナミクス研究ユニットのオフィス(以下、サテライトオフィス)です。

相鉄本線天王町駅から2つ隣、和田町駅が最寄り駅の一つである横浜国立大学に、2023年4月に新設された総合学術高等研究院。その学外拠点として、星天qlayにサテライトオフィスが作られました。「地域にイノベーションをもたらす作戦会議室のような場所にしたい」と語る、共創革新ダイナミクス研究ユニットのユニット長である真鍋誠司教授に、お話を伺いました。

 

サテライト研究室を、地域連携の拠点に


星天qlay Dゾーン外観

横浜国立大学では2つ目の高等研究院となる総合学術高等研究院。高等研究院は、学内でも特に特徴のある研究をしている研究者が、学部や大学院と兼任で所属し、研究と教育を行う組織です。

真鍋さん「横浜国立大学には2つの高等研究院がありますが、それぞれ位置づけが異なります。先端科学高等研究院は、世界水準の研究者が集い、最先端の科学研究を行う組織で、ナンバーワンを狙います。これに対して、総合学術高等研究院は、文理融合で社会にインパクトを与える研究を行い、その研究を社会に実装することを目指す組織です。オンリーワンの研究を行う組織、というと分かりやすいでしょうか。私が所属している総合学術高等研究院の共創革新ダイナミクス研究ユニットは、文系と理系、大学と企業、大学と地域など、さまざまな連携によってイノベーションを起こす方法論も含めて研究を行っています。」


サテライトオフィス・内観

連携、そして共創によっていかにイノベーションを生み出すかを研究、実装する共創革新ダイナミクス研究ユニット。そのサテライトオフィスは、どのような役割を担っているのでしょうか。

真鍋さん「サテライトオフィスは、大学内外、星天qlay内外問わずさまざまな人が集まって、地域にイノベーションを起こす作戦会議をする場にしたいと考えています。イノベーションというといわゆる技術革新を想像される方が多いかもしれませんが、ここでは、挑戦し、変化を起こし、社会に成果をもたらすあらゆる分野の革新をイノベーションと捉えています。

まず、サテライト研究室を地域連携の拠点にしたいと思っています。具体的には、地域に向けて大学内の活動や研究成果の発信、そして地域の課題を受信・吸収するという2つの役割を担う場所にしたいです。星天qlayの周辺には団地や商店街、ビジネスセンターなどがあり、地域の方がたくさんいらっしゃるので、皆さんが生活のなかで感じている具体的な課題を吸収して、大学に持ち帰りたいと思っています。そういった課題を、横浜国立大学にいる幅広いジャンルの専門家や、若い考え方やパワーを持った学生、さらには星天qlayのテナントさんや地域の皆さんと連携して、課題を解決していくイニシアティブをとりたいと思っています。そしてゆくゆくは、星天エリアにさまざまなイノベーションを起こすことが目標です。」

 

お互いを知ることで生まれる新結合


星天qlayのギャザリングに参加する真鍋さん

経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは、「新結合」という意味の言葉を用いて、イノベーションを論じました。人と人との「新結合」によって地域にイノベーションをもたらすため、「人を知る」ことを何より大切にしている真鍋さん。星天qlay内のイベントに積極的に参加したり、ゼミの視察で地方に行ったお土産をYADORESIのポットラックパーティーでふるまったり、PILEのスタッフさんの創作活動を応援したりと、ご自身も楽しみながら、丁寧に関係性を築いている姿が印象的です。

真鍋さん「これまで組み合わせたことのない人やもの同士をつなぎ合わせて新結合を生むためには、お互いを知ることが必要不可欠なので、星天qlay内外のいろいろな人と積極的にコミュニケーションをとるよう意識しています。星天qlayは商業のテナントさんも多いですが、人間誰しも、仕事とプライベートでは異なる顔を持っていますよね。店舗のスタッフとして働いている「店員さん」の顔からは想像できない、趣味や特技を引き出すためにも、お互いを知ることが重要だと思っています。

特にお隣のYADORESIの住人、PILEのスタッフさんとはたくさん会話をしていて、各々の特技を把握しているので、星天qlay内外の人とつなぎ合わせて、新しい価値が生まれるような仕掛けができないかを常に考えています。そういったつながりを積み重ねた先に『コミュニティ』というものが形作られるのではないかと思っています。」

 

星天は、可能性を感じるまち


PILEで行われた星天qlayラボに参加する真鍋さん

直線距離では近いものの、横浜国立大学周辺とは異なる雰囲気を持つ星天エリアは、真鍋さんからどのように見えているのでしょうか。

真鍋さん「星天エリアは、すごく可能性を感じるまちだと思います。初めて星天エリアを歩いたとき、ビジネスパークと団地、商店街の間に線路があり、生活とビジネスが分断されているように感じました。高架化して行き来はしやすくなったものの、まだ交流が生まれてないまちという印象があるので、だからこそミックスさせたい気持ちがあり、可能性を感じてうずうずしています。

『生きかたを、遊ぶ』という星天qlayのコンセプトを最初に聞いたときは、直感で良いなと思いました。特に日本は『真面目に』生きかたを考えがちなので、『生きかた』と『遊ぶ』という言葉が結びつくのは、私のなかでは新結合的な感覚で、おもしろいなと思いました。『生きかたを、遊ぶ』は、これまでと同じように過ごしていてはなかなか実践できないことなので、価値観のイノベーションが必要になると思います。星天qlay内の人も周辺の方々も、それぞれの特徴を活かしながら、そういうのも面白いね、いいねとお互いに良い影響を与え合っていくことが、『遊び』につながるのかなと思っています。

私個人としては、『生きかたを、遊ぶ』というのは既に実践しているような気がします。ただ論文を書くだけでなく、実践的に研究しているのも、いろいろな連携の要になろうとしているのも、私自身が楽しく、遊んでいるような心持ちでやっています。」

最後に、地域の方々に向けてメッセージをいただきました。

真鍋さん「サテライト研究室には学生や研究者が常駐しているわけではありませんが、星天qlayの方々、地域の方々と交流しやすくなるのが、場を持つ意義だと思っています。日々生活をしていると課題を課題と感じず、当たり前のものとして受け入れている可能性もあるので、そういう課題に気づくためにも、門を叩いてコミュニケーションをとりにきてもらえたらと思っています。オフィスの明かりがついているときにドアをノックしていただけましたら開けますので、まずは扉をたたいて、ぜひお声を聞かせてください。」

星天qlayには、大学教授としてではなく個人として足を運んでいる感覚なので、「先生」ではなく好きに呼んでもらって構わない、と語る姿が印象深かった真鍋さん。この場所を起点に生まれるイノベーションを楽しみに、まずは気軽にサテライトオフィスの扉をノックしてみてくださいね!

 

取材/橋本彩香・山下里緒奈

文/橋本彩香

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