2025.05.27
食で人と地域をつなぐ、まちに根差したイタリアンレストラン/fragrante tipico
2023年2月以降、順次開業してきた星天qlay。2025年3月に天王町駅 YBP口改札側のEゾーンに新たな店舗がオープンし、全面開業を迎えました。
今回は、Eゾーンにオープンした地域密着のイタリアンレストラン「fragrante tipico(フラグランテ ティピコ)」の代表・兼田 武和さんにインタビュー。
保土ケ谷区出身で、YADORESIが中心となって企画を行う「保土ケ谷子ども店長企画」にも参加するなど、オープン前から星天qlayと関わりがあった兼田さん。星天qlayで新たなお店を構えた現在の心境を伺いました。
気軽に足を運べるまちのイタリアン

fragrante tipico外観。テラス席はペット同伴で利用が可能。
かねてより天王町駅から徒歩9分の場所で、カジュアルイタリアン「fragrante fragola(フラグランテ フラゴラ)」を営んでいた兼田さん。
2店舗目となるfragrante tipicoは、南イタリアの漁港にあるバルをイメージしたという明るく開放的な店構えが特徴的で、気軽にお酒を飲めておしゃべりができるレストランとなっています。
兼田さん「敷居が高いイタリアンではなく、気軽に来れる価格帯で、地域に根差したお店をつくろうと決めました。とはいえ飲食店として味は絶対に妥協できないので、『Amalfi DELLA SERA(アマルフィイ デラセーラ)』出身のシェフが店頭に立っています。カウンター席に座って厨房を見たりシェフと会話をしながら、ぜひ臨場感を感じてほしいです」
7:30~23:30と、営業時間が長いのもfragrante tipicoの特徴。時間によって利用シーンに合ったメニューが用意されています。
~営業時間~
モーニング|7:30-11:00
ランチ|11:00-15:00
カフェ15:00-17:00
ディナー17:00-23:30(L.O. 23:00)
兼田さん「 駅前のお店なので、朝早くから夜遅くまで営業しています。朝に帷子川沿いを散歩する人が多いので、散歩がてら気軽に利用していただけたら嬉しいです。
モーニングとカフェタイム限定でお出ししているパンは、水分量や厚みなどを試行錯誤してつくりあげた自家製です。この自家製パンに、神奈川県産のやまゆりポークをはさんだポルケッタは、ぜひ食べていただきたいおすすめメニューです」
“イタリアン”レストランとして、エスプレッソとカプチーノにもこだわりが。エスプレッソマシンで抽出された味わい深いイタリアンコーヒーを楽しむことができます。さらに、ランチタイムにはお得なセットメニューも用意されています。
アッビナメントを楽しむディナータイム
ディナータイムのおすすめは、アクアパッツァ。 イタリアンワインソムリエが厳選したワインと共に楽しむのがおすすめだそう。
兼田さん「イタリアだと、料理とワインは必ずセットになっています。料理を食べ、そしてワインを口に含んだときのちょうどいいマリアージュ。
料理もワインも美味しくなるこの相乗効果をイタリアでは『アッビナメント』と呼び、日本でも高級イタリアンではそういった組み合わせがありますが、fragrante tipicoではより気軽に日常的に、食事とワインを合わせて味わっていただけるようにしたいと思っています」
地域とのつながりを大切に
fragrante tipicoの出店を機に、兼田さんはUNA PASSIONE株式会社を設立。「食で人と地域をつなぐ」という企業理念のもと、地域に根差した店舗づくりに力を注いでいます。
「fragrante=良い香り」と「tipico=土着品種」を組み合わせたfragrante tipicoという店名には、どんな想いが込められているのでしょうか?
兼田さん「イタリアは世界でもトップを争うほどブドウの生産量が多い国で、20の州ではそれぞれその土地でしか栽培されない品種のブドウがたくさんあります。
それをイタリアワイン用語では『土着品種』と呼ぶのですが、このお店も、この土地に根差したお店にしていきたいという思いを込めて、『fragrante tipico』と名前を付けました」
店名の通り、地元食材を使うことにもこだわっている兼田さん。料理には相模湾の魚や仏向町の畑のトマトを使用したり、保土ケ谷産のブドウからつくられた「横浜開港ワイン」を取り扱ったりと、地域とのつながりを大切にしながらお店を営んでいます。
まちのプラットフォームを目指して

店内に飾られているPILE会員のアーティスト kanaloa tsuneさんのレジンアート
子ども食堂を主宰したり、「保土ケ谷子ども店長」企画に参加したりと、「fragrante fragola」を営んでいた頃から、地域との交流が深い兼田さん。
星天qlayに新たな店舗を構えた今、地域やテナントとの関わりについてどのような展望を抱いているのでしょうか?
兼田さん「まちのプラットフォームのようなお店になることを目指しています。今後は店頭で地域の作家さんの作品や農家さんの野菜を売ったり、地域のお花屋さんと連携してアニバーサリーのお花を提供したりしたいと思っています。
fragrante tipicoに飾っている絵は、星天qlayにあるクリエイター向け協働制作スタジオ『PILE』の会員であるアーティストさんの作品です。今後もPILEさんと提携して、関わりのあるアーティストさんとのつながりも大切にしていきたいです。
Eゾーンにはキッチンカーを持っているテナントも多いので、お店の前のスペースでキッチンカーを並べてマルシェのようなイベントもやってみたいですね。これは野望ですが、星天qlayの全テナントでお化け屋敷企画ができたらおもしろいだろうなとも考えています」
「生きかたを、遊ぶ」は心のユーモア
最後に、このまちへの思い、そして兼田さんにとっての「生きかたを、遊ぶ」とは何かを聞きました。
兼田さん「星天周辺は、すぐに横浜駅へ行ける距離感でありながら、畑があり、川が流れ、商店街やお祭りもある。ローカル感があって温かいまちだと感じています。
『生きかたを、遊ぶ』というのは、ずばり心のユーモアだと思います。大人になると、ゴルフに行ったりクルーザーに乗ったり、『遊び』というのはお金がかかるものになりがちですよね。
ですがイタリアで修行をしていたときに、現地の方が昼間からワインを飲んで、おしゃべりをして、すごく盛り上がっていたんです。特別なお金をかけるわけではなく、食事をして、話をするだけで楽しめる。それが、とても大事だと感じました。
僕は高杉晋作さんの辞世の句である「面白いこともなき世を面白く」を座右の銘にしているのですが、食事をして、お酒を飲んで、おしゃべりをして、ゆっくり時間を過ごす。そういったことを面白がる心の持ち方が、『生きかたを、遊ぶ』につながるのではないかと思います」
食を通じて人と地域をつなぐfragrante tipico。その心躍る挑戦は、まだ始まったばかりだ。
取材・文/橋本彩香