星天qlayとは

2023.02.10

【後編】「生きかたを、遊ぶまち」星天qlayという挑戦 ー「HOSHITEN」を世界に。高架下に込めた未来への思いー

2023年2月2日、星川駅から天王町駅間の高架下に、全長約1.4㎞のエリアを5つに分けて開発する施設「星天qlay」の第1期がオープンした。

オープンを目前に控えた2022年10月、株式会社相鉄アーバンクリエイツ事業推進部長の齋賀幸治、星天qlayの設計デザイン監修を担当した株式会社オンデザインパートナーズ代表の西田司と萬玉直子、そして企画プロデュースと一部施設運営を担うYADOKARI株式会社の共同代表さわだいっせいとウエスギセイタの5人が、「星天qlay」への思い、そしてこのまちの未来を語った。

星天qlay開発の背景とコンセプトに込めた思いについてお届けした前編に続いて、後編では、「星天qlay」という挑戦を形にするために「生きかたを、遊ぶ」というコンセプトをどのように設計に落とし込んでいったのか、YADOKARIが企画・運営する住まいYADORESI(ヤドレジ)について、そしてこれからのまちづくりと星天の未来についてお届けする。

対談記事の前編はこちら

余白の中に、新たなアイディアと関係性を紡いでいく

西田:今回オンデザインがパースを作らせていただきましたが、パースはほとんど屋外なんです。

今まで移動という機能のみを担っていた道路が、滞留する場所でもあると思い始めると、見え方が変わりますよね。星天qlayでは先駆的にこういったデザインができると思っていて、1日かけてゆっくり歩いて楽しむまちづくりと相性が良い。頭上に電車が走り、隣には川が流れているという、土木と一体になっているエリアなので、ランドスケープ的な面白さもあると感じています。

自分がこの場所を楽しんでいることが、誰かにとってまちの風景になる。住んでいる方からすると、今まで空白だった風景が変わったという意味でも、「新しい自分のまち」という感覚がでて、愛着も生まれやすいと思っています。

齋賀:今までは地上に線路があり、住人は線路を背にまちを見ていましたが、高架下に余白が生まれたことで、まちに足りない機能を埋める場所としても、星天qlayにすごく期待してくれている印象があります。

西田:設計者が言うのも何ですが、1.4㎞開発区間を埋めるのはなかなか大変で、そもそも星天qlayは余白が生まれやすい初期設定だと思います。完成形ではないから全てをぎゅうぎゅうに埋めるわけではなくて、新しいアイデアがあったら取り込むことが可能なスケールと立地で。

そこに、自社の土地だからとチャレンジさせてくれる相鉄さんの寛容性が、「遊ぶ」というテーマの面でも相性が良いと感じています。

萬玉:星天qlayは、「変化を楽しむ人」たちが人を起点に集まり、その間にテナントが入り、それらを繋ぐ環境が整備されたまちづくりを行うのプロジェクトだったので、何かを作るというよりは、関係性を一つ一つ丁寧に積み重ねていくような作業でした。

こういう人がいたらこういう暮らしするのではないか、こういう機能とこういう機能が融合するとより人が集まるのではないかといったように、建物の中も外も、ひいては高架下とまちも、あらゆる関係性について打ち合わせを重ねましたね。

大きい開発を行いつつ、線路で分断されていたところに人が集まる環境を作ることが重要だと考え、ハード面では「サイドウォーク」をテーマに、高架下に人が流れながら集まる場所をどう作れるかを意識しました。

新たな暮らしの実験、YADORESIの「はなれマド」

さわだ:施設全体として「生きかたを、遊ぶ」というコンセプトを体現する場は随所に入れていきたいと思っています。YADOKARIが運営する住まい「YADORESI(ヤドレジ)」には、自己表現や小商いができる「はなれマド」を設置して、リビングコストをゼロに近づけていく新しいチャレンジをする人たちがどんどん入ってこれる場づくりをしていきます。

上杉:コロナ禍によって家にいる時間が増え、職と住が近接してきたなかで、自分のスキルや経験を自分の住むまちに還元しながら居場所を作ることの幸福感を、今の若い世代の方たちは感覚的に気付いているように思います。

今回の星天エリアの開発では、資本主義的な価値観とは異なる次のフェーズの価値、真の豊かさへの思いも込めて、人を中心としたレジデンスを考えました。

さわだ:思いきり振り切ってみると、もっと家の可能性って広がるかもしれない。その可能性を知るための実験のような感覚です。

萬玉:星天qlayのコンセプトを最も体現する「変化を楽しむ人」が集うYADORESIの設計は非常に重要だと感じていて、入居者22人が集まる環境を作るというより、それぞれがまちとダイレクトに繋がることのできる住まい方を作りたいとYADOKARIの皆さんと話をしていました。

YADOKARIの企画やアイデアが重ね合わさった星天qlayだったら新しいチャレンジができると思い、自分の部屋から一歩出たらダイレクトにまちと繋がる「はなれマド」という、今までにありそうでなかった住まい方を提案させていただきました。

西田:ベッドタウンの街並みは歩いていてもカーテンが全部閉じているとよく言われますが、YADORESIのはなれマドは、コミュニケーションのための窓だから、カーテンは開いていて、窓から偶発的な出会いが起こることがすごく面白いなと感じています。

かつてのただ家に寝に帰るだけの時代は、時間の余裕がなく、道路は移動するためのもの、住宅地は寝るためものというように、まちが機能的すぎていた気がします。

コロナ禍で家にいる時間が増えて、「小商いを家でやってみよう」という気持ちが生まれるのは、機能的過ぎたり、ぎゅうぎゅうに詰め込まれていたものを少し緩める方向に人の意識が向いたように感じていて、それが「余白」という意味での遊びだと思うんです。

そういう時間を持ちたいと思うこと自体がそもそも余白がないとできなくて、週末だけでもそのような時間を持つだけでも、暮らし方は変わると思います。

YADORESIはなれマドイメージ写真

萬玉:はなれマドがキーアイテムになっているのも、建物の内と外のタッチポイントとして、住人と外の人の関係性が発生する場所こそ、星天qlayらしい場所になるのではと感じています。

YADORESIに人が住み始めると、住人のAさんとBさんCさんがそれぞれ語る星天qlayが良い意味で全然違うんだろうなと思っていて、そこに新しさを感じて、非常に期待しています。

上杉:はなれマドによる小商いを中心に、緩い遊びの中で老若男女が接点を持てる場になるのではと思っています。YADOKARIとしては、住まいが高架下に置けたことは、本当に大きな実験をさせていただいてるという感覚なので、これからどうなっていくかすごく楽しみです。

西田:YADORESIのはなれマドは働き方の実験でもあると感じています。住宅の中に小商いという文脈が入り込み、例えば週末だけ趣味に関するものを販売するという暮らし方がすごく良いなと思っていて。店舗を借りるとコスト面のリスクが発生しますが、住宅の一部が商いの場として開けると、ノーリスクで働き方の実験ができますよね。

そしてもしかしたら、はなれマドの小商いを見た星天エリアの方々が、住宅の玄関先で小商い始める可能性もあると思うんです。そうすると街を回遊する人がさらに増え、まち全体が面白くなるのではと思っています。

さわだ:レジデンスに来てくださる人たちには、僕たちが定義した「遊び」ではなく、「遊び」というものをそれぞれの中で考え実践しながら、まちにどんどん広げていってもらえればと思っています。

「HOSHITEN」を、いつかグローバルに

ー対談の最後に、これからのまちづくりに対する思い、そして星天qlayに対する思いを聞いた。

齋賀:今までの相鉄のまちづくりはベッドタウンの開発がメインだったので、住宅を売って終わりというパターンが多く、あまりまちに作用することなく時間が過ぎていった部分があります。

しかしこれからは、「まちにどのように作用するのか」を考えることが必要になると思うので、立地によって開発のアプローチは異なるものの、星天で行ったことや学んだことをまた別の場所でフィードバックしたり、色々な展開ができるのではと感じています。

今私が携わっている沿線開発のプロジェクトに関しては、ゆめが丘は規模は大きいものの、物質的に大規模な開発を行うというよりは、ジワジワと少しずつまちに浸透し、定着するようなまちづくりを目指していきたいと思っています。

さわだ:世界を変えたいですね。物事を大きく変えるのは人の強い熱量だと思うので、そういう人たちをどれだけ集めてこれるかが大事だと思うし、それを率先していくうえで、YADOKARIも熱量を込めて本気で運営していきたいと思っています。

そしていつか「HOSHITEN」という言葉がグローバルに世界で通じるようになったら良い。3年や5年で叶うような話ではないかもしれないですが、永続的にまちづくりを行いながら、東京の2番煎じではなく、常にここでオリジナルのことが発信されていて、「尖っていて面白いまちだよね」と思われるようなまちづくりをして人を惹きつけたいです。

上杉:今回この開発事業で、相鉄さんが余白を残して作っていけばいいというスタンスをとってご一緒させてくださったことが、星天エリア、ひいては横浜の未来にとって、非常に大きなことだと思っています。

星天を世界へ発信できるように、住人の皆さまとも力を合わせて、一緒に星天qlayを作っていきたいと思っています。

「星天qlay」を共に創り上げた3社が、開発、設計、まちづくりというそれぞれの立場から、プロジェクトへの思いとこのまちの未来を語った今回の対談。高架下約1.4㎞を使った壮大な「暮らしの実験」は、それぞれの分野で培ってきたものがあるからこそ実現できたものだろう。

彼らが「星天qlay」というプロジェクトに込めた真の豊かな暮らしへの願いは、この高架下に集う「変化を楽しむ人」たちによって、ゆっくりと時間をかけて、けれど確実にこのまちの未来を変えていくに違いない。

あなたもぜひこのまちで、生きかたを、遊んでみませんか?

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星天qlay公式サイト▼
https://www.hoshiten-qlay.com/

コミュニティビルダー・住人募集中!YADORESI公式サイト▼
https://yadoresi-hoshiten.life

取材・文/橋本彩香

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