星天qlayとは

2023.09.27

【星天qlayラボvol.2】商業施設に「コモンズ」は存在するのか!?〜持ち寄りと偶然で繋がるコミュニティ〜

相鉄線星川駅から天王町駅高架下に誕生した施設「星天qlay」。全長1.4kmのエリアを5つのゾーンに分けてオープンしていきます。2023年2月にはまず第1期となる星川駅部・Bゾーンが、さらに、4月にはクリエイター向け協働スタジオなどがあるDゾーンがオープン。さまざまな側面を持つ施設として、どのように発展していくか期待が集まっています。

そんな星天qlay内にあるqlaytion galleryにて7月7日、「【星天qlayオープンラボイベントvol.2】商業施設に「コモンズ」は存在するのか!?〜持ち寄りと偶然で繋がるコミュニティ〜」が行われました。

今回はシェアビレッジ株式会社代表取締役、ハバタク株式会社代表取締役の丑田俊輔さんを秋田からお招きして、「コモンズ」の考え方などを参加してくださったみなさんとシェア、さらに、星天qlayの可能性について考えてみました。

「コモンズ」ってなに?

まず、確認しておきたいのが「コモンズ」について。

「コモンズ」は日本語で「共有資源」などと訳されるもの。「公(public)」でも「私(Private)」でもない「共(Common)」の概念で、お互いに助け合って共に何かを作ったり、生産者と消費者の壁を越えて、みんなが何かを持ち寄って、一緒に「場」を育てていく営みのことをいいます。

多様な一面を持つ星天qlayではこの概念をどのように捉えることができるか、実際に丑田さんにお話を伺いながら、その可能性を探っていきます。

「コモンズ」が呼び込むまちの可能性

まず、ファシリテーターを務めるYADOKARI株式会社の山下里緒奈さん、木村 勇樹さんから星天qlayについての紹介がありました。星天qlayでは、テナントとしてお店を構えている店長さんたちによる店長会議をより双方向のコミュニケーションの中で行う”ギャザリング”という時間や、qlaytion galleryという余白のスペースを使ったテナントさんとのコラボ企画、自分のストーリーがドリンクになる消費を遊ぶキッチンカー企画「0 YEN TRUCK(ゼロエントラック)」など、オープン以来、さまざまなイベントや試みを行ってきています。

丑田さんとのトークセッションから、今後の星天qlayについてどのようなヒントが得られるのでしょうか。

丑田さんは普段、家族と共に秋田県五城目町で暮らしていらっしゃいますが、東京の神田錦町にも拠点があり、東京にも週1程度でいらしているそう。いわゆる二拠点生活というスタイルです。

五城目町は「秋田の中でも観光地でもないし、有名な特産物があるわけでもない。普通の里山」だという丑田さん。
「コモンズとかコミュニティとか言っているけれど、実は人間よりも魚のほうが好き(笑)」とのことで五城目町では釣りや、その釣った魚を知り合いのシェフに調理してもらったり……など五城目町ならではの楽しみも充実させています。

そんな丑田さんが「コモンズ」という概念に出会ったのは2004年、意外にもそれは東京でのこと。神田錦町にある公共施設を民間と共にまちづくり拠点として活用できないか、という話があり、そのときに、「ちよだプラットフォームスクウェア」を立ち上げることになったそうです。

エリア内にあるビルに起業家であったり、NPOであったり人が集まってくると、自然とそこにはいろんな経済活動が生まれてきます。そこで生まれた利益をまちに再投資し続けることで、地域に循環する繋がりが育まれていくと言います。

「繋がりの資本を蓄えていくことで、多様なチャレンジだったり、暮らしているまちに結果的におもしろいことが起こったりする」と丑田さん。

屋上には50種類以上の農作物が育てられていたり、コロナ禍にはソーシャルディスタンスバーベキューをやったり。また、お祭りのときには施設を無料で開放したりと、地域の人たちと共にいろんな使い方を模索しています。

そして、実は五城目町は千代田区と姉妹都市提携を組んでいます。そんなご縁もあって、2014年もあって五城目町に移住。日本人が行ったことがない県ランキング1位、日本一の人口減少県だという秋田県。そのため、空き家も多く、管理しきれていない山もあり、商店街もシャッターを閉める店舗が増えていったり。

でも、だからこそ、そこには余白があると捉え、そういったものをコモンズ(=みんなで自治)していき、新しいコミュニティの形で再活性化していくとまた見えてくるものがあるのではないかと、いろんなプロジェクトを立ち上げていっているのだそうです。

丑田さんの代表的な取り組みとしてあるのが、「シェアビレッジ」というプラットフォーム。築134年の茅葺(かやぶき)の古民家の再生に向けて、会員として「村民」を募り、会費として「年貢」を納め、管理がとても大変だという茅葺の屋根の家をみんなで修理し、共有するというものでした。

ほかにも、コロナ禍により休業してしまった300年続く温泉を地域住民の力で復活させるという取り組みも。地元の女子高生を筆頭に、多くの人の持ち寄り合い、再始動へ。地元に暮らす人や関わる人たちの自治による可能性を強く感じます。

こんな暮らしについて、丑田さんは「リアルあつ森(あつまれどうぶつの森)みたいになっている」と言います。

「デジタル空間が最近面白くなっているんですが、リアル空間も同じぐらい楽しくできるんじゃないかなと思ってて。田舎町でも都会でも公共の使われていない資産、まさに線路の高架下とか。田舎だとなかなか市場経済にのってこない山とか、商店街とか、そういったものを共助の力でアップデートしていくことで、リアル”あつ森”を楽しめると思っています。住民票や住宅の有無にとらわれずに、例えば横浜に住みながら秋田のコミュニティに関わってみるとか、海外も含めて、自分たちで共助でやっていく複数のコミュニティや経済圏があったりする暮らしもいいんじゃないかな、と」

そして、そのキーワードは「遊び」だと丑田さんは言います。

「社会のためとか、まちのためとかいうよりは、自分たちが遊び心を持って夢中になれるようなことから、プロジェクトが始まっていくんじゃないかと思います。そこで遊び仲間ができて、一緒にまた次のフェーズが始まっていく。どんどんコモンズが面白くなっていく。」

興味深く聞いていた参加者のみなさんからはこんな質問も。

「みんなで持ち寄ってつくろうと思うモチベーションってどこから生まれてくると思いますか?」

そんな問いかけに対して丑田さんは。

「スモールチームでやるというのは一つあるかもしれない。最初は狂気の遊びみたいな人が中心にいて、こいつ狂ってるなと思われるかもしれないけど、そこに仲間が集まってくる。逆に、集まる人が多くなってくると、一人ひとりの熱量は薄まっていく場合もあり、小さなコミュニティがたくさんあることにも面白みを感じています。」

「子どもたちは一般的に意味のない・役に立たないと言われるようなことが好き。でも子どもだけでなく、人間ってそれでいいんじゃないかって思ってて。目的や機能性を求められる時代に生きているけど、もっと自由でいいはず。欲望に忠実になるっていうのを現代人はもっと意識的にやっていくのもいいんじゃないかと思います。」

 

みんなでコモンズについて考えてみよう!

丑田さんのお話をたっぷりと聞いたところで、ここからは現地の参加者のみなさんとともにワークショップを行っていきます。
星天qlayという場所を「コモンズ」という視点で捉え、仮に丸一日自由にこの場所を使えるとしたら何をするかをグループに分かれて妄想会議をしてみました。

まずはグループごとに自己紹介を。
「今日呼ばれたい名前」、「幼少期になりたかった職業」、「人生最期の10日前にやりたい遊び」をポストイットに書いたあと、グループ内で発表していきます。

自己紹介を通して、だんだんとほぐれ、自然と会話も弾んでいきます。

続いては、解釈が難しい「コモンズ」という言葉を別の単語に言い換えてみます。丑田さんの話を聞いた後、それぞれにとって「コモンズ」とはどんなキーワードやイメージで置き換えられるかをそれぞれ紙に書いて、七夕にちなんだ「笹」に貼っていきます。

「インフラ」「お金で買えない」「シェア」「最高の町内会」……などなど、丑田さんのお話を受けて、みなさんがコモンズのイメージを膨らませていってくださったのがわかるキーワードたちです。

さらに、この「コモンズの笹」を眺めながら「妄想会議」を繰り広げていきます。

自分たち以外のグループのキーワードを見ることで、ますます「コモンズ」のイメージが広がっていきます。
最後の「星天qlayをコモンズと捉えた時に、どんなことを自由にやってみたいか」の発表の際にはさまざまな意見が飛び出しました。

「物々交換をしたり、消費行動をもっと遊べる場所になれば」という意見や、「星天qlayの空間を活かして、長い廊下を誰が一番早いか競う」「やっちゃだめなことをやりたい。壁に落書きをしてみたいです」というアイディアも飛び出しました。

「星川だから、星にちなんだことをしたい」と発想した方は、AIにその方法について聞いたら、「プラネタリウムなどをデジタルで作る」という回答が出たそう。ほかにも「朝ごはんを作って食べる会をしたい。都会の朝は忙しないから、みんなでワンコインで食べられる炊き出しのような場があったらいいな」という意見も。

星天qlayでどんなことをしてみたいか、妄想するだけでもその場所が少し身近なものに感じられました。さらにみんなで空間や価値観を共有し、お互いに持ち寄りあってつくる場の面白さにも胸が躍ります。

生きかたを遊ぶまち「星天qlay」をコモンズの視点で捉え直してみたら。

ただ買い物をするだけの商業施設ではなく、そこに集う「人」の魅力や想いの連鎖を軸にした使い方が生まれてくるのではないかと感じます。

イベント終了後には交流会も賑やかに行われました。

これからも、星天qlayで変化や余白を共に面白がるみなさんとご一緒していけたら嬉しいです。

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